DeNA、M&AでWeb3事業拡大を目指すその理由は?(Web3戦略準備室 田中翔太)

DeNAのWeb3戦略、M&Aという選択肢

Web3領域で新たな価値創造を目指す企業やプロジェクトをマッチングするWeb3特化型の総合ビジネスマッチング・プラットホーム「MergePad」。その「MergePad」を活用し、パートナーになれるWeb3スタートアップを探すDeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)のイノベーション戦略統括部 Web3戦略準備室副室長の田中翔太を取材。田中氏にこれまでの同社の取り組みや、M&Aで目指すことについて訊いた。

クリプトとの出会いは「モナコイン」!?

–田中さんはDeNAでWeb3関連の担当として、具体的にどの様な事業を見ていらっしゃるんですか?

DeNAでイノベーション戦略統括部 Web3戦略準備室の副室長と、デジタルエンターテイメント事業部の事業部長を兼務しています。

Web3戦略準備室ではWeb企業への投資検討をはじめ、市況や法整備の状況やパートナー企業の動向などの情報収集なども行なっています。また社内でWeb3サービスを実施する際の環境整備などもサポートしています。そしてデジタルエンターテイメント事業部でも事業部門の視点からWeb3を推進しています。

–田中さんの、クリプトやブロックチェーンとの出会いはいつですか?

2016年頃から、この領域自体はずっと見ていました。ICOバブルで盛り上がっていた頃です。当時ネットのクリエイターさんと仕事することが多かったので、そんな流れで「2ちゃんねる」から生まれたモナコインを貰ったりしました。はじめは仮想通貨として意識はせず、ちょっと変わったポイントぐらいでの気持ちだったんですが、その後国内取引所が整備され、価格が付いて、お金みたいに価値が生まれるんだと感じたところからスタートしています。

余談ですがその貰ったモナコインが、当時私の婚約指輪と結婚式の費用の助けになったんですよ(笑)。

そこからいろいろなコインに触れて、Discordでコミュニティに入って盛り上がったりしていたのが懐かしいですね。夜な夜なDiscordにみんなで集まってホワイトペーパー見ながら語り合っていました。

そういった当時からの経験や、これまでマーケットを見てきた感覚は、現在のWeb3事業の捉え方の参考になっていると思います。

Web3はマスアダプション前夜

–ICOバブルから、冬の時代、DeFiサマーやNFTブームを経て、現在はまた冬の時代とも捉えられますが、それでもWeb3への注目は続いています。DeNAさんとして、現在のWeb3トレンドはどんなビジネスチャンスだと、捉えられてますでしょうか?

Web3に限らず、新しい技術トレンドの事業化について、DeNAは常にチャンスとして捉え、それがどんな自社への影響があるか、どのくらい事業として成立するかに注目しています。

その上でWeb3については、これが「デファクトスタンダードになり得る可能性」と、そこに「若い世代の開発者やクリエイターの熱狂がある」点がチャンスだと捉えています。

まずは前者について。すでにパブリック・ブロックチェーンやその上のアプリケーションは、自然発生的に世界中の多くの人に使われはじめていて、もう止められない状況にあると感じています。既存のウェブサービス事業者が囲い込んでいるものをオープン化したり、誰でも使えるようにしたりすることが価値となってきている。

だからパブリックチェーン、特にイーサリアム(Ethereum)などが普及するにつれ、事実上の統一フォーマットとして活用される可能性は高いと予想できます。これは、ビジネスチャンスでもあると同時に、多くの人たちが語るように大企業にとっては脅威と捉えることもできます。

ただWeb3がデファクトスタンダードになるにはもう少し時間もかかると考えています。夜明け前というにはまだ早く、マスアダプション前夜、というところでしょうか。だからこそ今はWeb3をどう取り入れていくのかを検討する、重要な時期だと思っています。

Web3に集まる、若い世代の開発者やクリエイターの熱狂

そして後者の「若い世代の開発者やクリエイターの熱狂がある」ことにも注目しています。

DeNAも比較的若い会社ではありますが、もっと若い世代、大学生や高校生の人たちでもWeb3に挑戦しようしている人がいるのは、すごく面白い現象ですよね。若い才能が引き寄せられています。

短期収益での顧客や取引先としてだけでなく、そういった才能から中長期的に産み出されるかもしれない”こと・もの”、例えばプロダクトだけでなく、知的財産、組織、文化、価値観といったものに魅力を感じています。

また、そういった熱狂をどのようにDeNAグループのパートナーとして連携するか、もしくは仲間になってもらうか、というのは非常に重要なテーマだと考えています。

DeNAのこれまでの取り組み

–すでにDeNAさんもWeb3の取り組みを実施されています。具体的に実施してきたことを教えていただいてもいいでしょうか?

ブロックチェーン自体に会社としては非常に興味を持っており、2016年頃から社内のエンジニアの間で実証実験を実施してきました。その後も出資などを通じてリサーチは続けてきています。

直近だとNFTを活用した事例として、弊社のグループの横浜DeNAベイスターズの「PLAYBACK 9」というNFTコレクションサービスや、バスケチームの川崎ブレイブサンダースのNFTカードを用いた試合予測的な要素もあるサービスなど。そしてDeNAで長く運営して現在は終了したゲームのキャラクターのNFTコレクションサービスなども展開しています。

また愛媛県と一緒に、愛媛のご当地キャラ「みきゃん」のNFTを発行して関係人口を増やす実証実験も行うなど、公共領域での取り組みも実施しています。

–DeNAさんのすでにある幅広い事業領域の中で、どこがWeb3と相性がいいとお考えですか?

周囲から大きく期待いただいているのはエンターテイメント領域だと思っています。実際、昨年からいろいろな企業さんからお声がけいただきました。Web3をやっていない大手企業さんから事業パートナーにというお話もありますし、スタートアップの方々からDeNAのオリジナルゲームをWeb3化したいとお声がけいただくことも多いです。

FTXの破綻があり、昨年後半から現在にかけて市況は悪くなっています。そんなタイミングだからこそDeNAの開発力やサービスの企画運営力を評価いただき、その力を貸して欲しいというオファーをいただけているのだと思っています。

DeNAが「MergePad」でM&Aを検討する理由

–現在「MergePad」でWeb3スタートアップのM&Aについても検討されていると思います。すでに社内にもWeb3のチームやエンジニアがいらっしゃると思いますが、それでもDeNAさんにとってM&Aという選択肢のメリットは何でしょうか?

前提として、DeNAはWeb3事業について、行政当局とも情報交換を重ねながら進めています。

世界的な市況は難しい面もありますが、国内に目を向けると、改正資金決済法など、国内法整備の改正・施行により、いくつか注目すべき機会、可能性が産まれていくと見込んでいます。

DeNAとしてはすでに多くの顧客を抱えるサービス提供事業者、サービス及びコンテンツ提供ができる事業者として、他プレイヤーとも積極的な関わりを計画しているところです。

DeNAの社内にもWeb3に取り組んでいるメンバーはいますが、そのメンバーらは目の前にある事業推進に全力投球しています。また今後Web3展開をした方がいい事業部も、現状の業務も進めなければいけないので、なかなかWeb3にどっぷり浸かって、思想的に体現してビジネスデベロップメントできるかというと、簡単ではないと考えています。

だからこそ、外部の力を借りる、あるいは仲間になっていただくことができるM&Aという手段に魅力を感じています。

DeNAがカバーできていない、社内でも気が付いていないような領域もあると思っています。そこにある「成功の兆し」を、社内だけに拘っていると見落としてしまうかもしれません。それを見つけるには、熱量が必要ですよね。その熱量を持った仲間と一緒になれるのが、M&Aの一つのメリットだと思っています。

–具体的にどんな企業を探していますか?

前述した「成功の兆し」を掘り下げると、それは社会に新しい価値が生まれることや、人々の行動が変わることだと思っています。私たちも過去にモバイルゲームで、人々の行動が変わるのを実感してきました。

売上規模の大きさやユーザーの数の多さではなく、すごくミクロでもそういった兆しを見つけている、もしくは見つけたと実感しているスタートアップ/起業家を探していますね。

そういった企業さんとは、すぐにM&Aという話ではなく、まずDeNAと協業することから始めさせていただく形でもいいと思っています。例えば協業して、弊社はスポーツチームやアスリートのブランドをお貸しする、横浜スタジアムというアセットを活用いただくなども可能です。

全力で一緒に事業を育てていくことができるのがDeNAの良さだと自負していますので、とにかく「MergePad」で多くの企業さんと出会いたいですね。

DeNAが提供できるメリット

–DeNAさんが「MergePad」で繋がった企業に提供できるメリットやシナジーは、何でしょうか?

DeNAは元々、創業者の南場(南場智子/代表取締役会長)が当時ネットオークションに可能性を感じて起業した会社です。今でこそネットオークションは当たり前に感じるかもしれませんが、当時はこの領域にも多くの参入障壁があったんです。それらを乗り越えてDeNAはオークション事業を拡大しました。

その後、モバゲータウン、ソーシャルゲーム、ライブ配信、ヘルスケア・メディカルの領域に挑戦した時も、いろいろなものを乗り越えてきました。DeNAはどんどんと新規参入を続けている会社です。その挑戦の数だけ、成功も失敗もたくさん経験し、それが社内に蓄積されています。

これらの経験から学んだ多様なノウハウや意思決定の戦略は、ご一緒する企業さんに提供できる重要なメリットだと思っています。具体的には、プラットフォームサービスを多数グロースさせてきた経験から、コミュニティ・マネジメントやネットワーク効果を最大化するノウハウなどです。

–今お話に出た南場会長も、Web3領域に積極的ですよね?

ものすごく関心を持っていますね。

南場の所属する経団連でも「web3推進戦略」を出しており、南場自身Web3は大きく日本の未来に活用できるのではないかという希望は感じているんだと思います。

そしてすごくアンテナを広げて、たくさんのWeb3起業家と会っていますね。私のところにも特定の領域を「すぐに調べてみて、面白いから会ってみて」という話がよく来ます。

現在こういった機会が多数あるのも、南場がスタートアップを愛しているからこそだと思っています。だからこそ私も事業サイドとか投資サイドとしてもバックアップしていきたいです。

だから「MergePad」を通じても、カチッとした相談だけじゃなくて、「起業したばっかりなんです」、「アプリ作ったらユーザー数が急激に伸びているんですが、今後どうしていくとよいでしょうか?」というレベルの相談でもいただけると嬉しいですね。

エンタメと社会課題解決、その両輪をテクノロジーで

–最後に今年のDeNAさんの全社的な取り組み、そしてその中でのWeb3事業の位置付け、またM&Aや投資をどの程度積極的に取り組まれていくのかを教えてください。

DeNAは「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」をミッションに掲げ、ゲームやスポーツ、ライブ配信などのエンターテインメント領域と、ヘルスケア・メディカルなどの社会課題解決領域、その両方を展開しています。そしてこの2つの領域でテクノロジーを使ってどれだけ成長していけるかというのが重要なテーマです。

Web3を進めるにあたって、前述の2つの領域どちらかだけではなく、その両方を繋ぐものも十分生み出せると思っています。そしてこの2つの領域を実現するテクノロジーの1つが、Web3だと感じています。

またM&Aや投資に関しては、もちろんビジネスでやっているので投資に対してはリターンやシナジーを求めていく部分もあるのですが、その前段階として、まずはDeNAが積極的に動いていることを多くの企業さん認知していただくアクションとして実施していきたいですね。

累計の金額や件数がどうとかではなく、2023年にこれだけ成功しそうなWeb3スタートアップを実はDeNAさんが手伝っていたんだね、と評価いただける状況を実現したい。それがKPIです。

だから繰り返しになりますが、「MergePad」を通じても、いきなりM&Aという話ではなく、一緒にWeb3を盛り上げるパートナーになれる人たちとたくさんお会いしたいと思っています。

「MergePad」について

「MergePad」は、Web3領域に特化した、ビジネスマッチング・M&Aプラットフォームです。MergePadはパートナーとして、ビジネスマッチングでは様々なニーズをヒアリングの上で企業紹介を実施し、M&Aでは企業評価、候補企業の選出・選定、ご提案、交渉・成約まで幅広くサポートさせていただきます。

「MergePad」ビジネスマッチング
Web3プロジェクトを進める企業様に提携/協業先や業務発注先などをご紹介させていただくプログラムです。「MergePad」のWeb3領域に精通した専門スタッフがご要望をヒアリングさせていただき、さまざまなプランをご提案させていただきます。なお初回ヒアリングは無料です。

※こんな方におすすめ
・開発企業やエンジニアを探してい方
・Web3関連の開発実績があり、業務を探している方
・Web3の取り組みに際し、広く提携/協業先を探している方
・自社Web3プロダクトやコンテンツの利用企業を探している方

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「MergePad」M&Aサポート
M&Aの支援として、企業評価、候補企業の選出・選定、ご提案、交渉・成約まで幅広くサポート。M&A経験のある金融の専門家と技術DDが可能なブロックチェーンの専門家がアドバイザーを務め、企業の技術・ノウハウ・トークンの価値を算定します。また、複数領域での開発実績のあるエンジニアによる技術的なDDを行うことにより、適切なマッチングを行うことが可能です。着手金・月額費用無料のサービスです。

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Source: https://www.neweconomy.jp/features/mp/297373