金融安定理事会(FSB)、暗号資産の国際ルール提言 | あたらしい経済

FSB、暗号資産の国際ルール提言

「暗号資産の冬(crypto winter)」がこの市場から約2兆ドル(約292兆円)を消し去り、投資家に損失を負わせた。それを踏まえて、金融安定理事会(FSB)は、暗号資産企業が従来の銀行のような活動を行う際には銀行と同様の資本を確保すべきであると10月11日に提案した。

20カ国・地域(G20)間の金融ルール作りを調整するFSBは、加盟国に適用すべき9つの勧告を行った。

現在、規制当局が投資家にすべての資金を失うリスクがあると警告しながらマネーロンダリングやテロ資金調達に対する保護規定を遵守するだけで、ほとんどの国では暗号資産に関する規制が整っていない状況だ。

FSB議長を務めるオランダの中央銀行総裁クラース・クノット(Klaas Knot)氏は、「暗号資産の冬、つまり暗号資産の最近の急激な引き下げによって、既存の暗号資産の構造的脆弱性に関する理事会の評価が強化された」と伝えている。

昨年11月のピーク時、約3兆ドル(約392兆円)という市場規模になった暗号資産市場に対し、現在約9350億ドル(約136兆円)となったことは、金融安定性を脅かすほどの規模ではないが、再度回復する可能性が高く、規制するためのルールが必要であるとの見解を示している。

クノット氏は、今週ワシントンで開催される予定のG20財務相会議への書簡で「金融安定化に対するリスクへの懸念は、遅かれ早かれ再び表面化する可能性がある」と説明した。

FSBは、暗号資産企業の監督、リスクとデータの管理の枠組みを整備し、問題が発生した暗号資産企業を円滑に閉鎖するためのプランを持つことを推奨している。

FSBは「最近の市場の混乱の中で、いくつかの暗号資産関連の金融企業は、暴落に対する脆弱性、資本金の少なさ、リスクの高い事業体への集中的なエクスポージャー、リスクの高い取引や投資の結果、破綻した」と説明している。

この提案は、特に欧州連合が2024年から暗号資産を規制する画期的な規則を完成させるにあたり、規制の国境を越えた一貫性を求めるものとなっている。

FSBは、基本的な原則は、暗号資産企業、銀行、決済プロバイダーのいずれが行う場合でも、同じ活動を同じ方法で規制することであり、暗号資産企業はこれを確実にするために一部の機能を分離する必要があるかもしれないとしている。

この提案は12月15日まで公開され、2023年半ばまでに最終決定され、FSB加盟国はその実施を早めることが期待されている。

またFSBは通常ドルなど法定通貨の価格にペッグした暗号資産の一種であるステーブルコインの規制に関するガイダンスを見直した。

FSBは5月のステーブルコイン「UST」の暴落は、安定化メカニズムを持たないステーブルコインの損失リスクの高さと潜在的な脆弱性を浮き彫りにしたと述べている。

FSBは、既存のほとんどのステーブルコインが同指針を満たしていないとし、ステーブルコインのガバナンスと安定化メカニズムの強化、償還権の明確化と強化などの指針の改定を提案した。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Huw Jones; editing by David Evans)
翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)
images:Reuters

Source: https://www.neweconomy.jp/posts/265506