足元から参政せよ。DAOで取り戻す民主主義の本質。
ブロックチェーンエンジニアの落合渉悟氏の初の著書『僕たちはメタ国家で暮らすことに決めた』が上梓された。web3関連の出版が相次ぐ中、異色の存在感を放つ本書は、DAO(自立分散型組織)が世界を再構築できるのかについて、思考を巡らせた1冊になっている。書籍の中で落合氏が現在開発を進めているDAO作成プロトコル「Alga(アルガ)」についても紹介されている。
「あたらしい経済」は本書の出版を記念して書籍の中に収録された落合氏と3人の有識者の対談パートの一部を「試し読み」として公開する(全3回)。
今回はブロックチェーン戦略政策研究所 代表の樋田桂一氏との対談「足元から参政せよ。DAOで取り戻す民主主義の本質。」の一部を公開する。
ぜひこの記事で書籍の魅力にふれ、本書を手にとっていただきたい。
法を「拡張」できるのは政治家だけ 政治家と歩むロビイストの奥義
落合(以下:O):今回、対談をお願いした樋田さん、内田さん、星さんの3人は、僕がこの国のDAOとAlgaの話をしたら、ものの1時間で完璧に概要を理解し、示唆をいただいた3人です。そんな人は地球上でたった3人。僕は英語も話しますから、英語圏をはじめとする海外の人にもTEDxなどを通じて2年ほどこのアイデアを発信してきましたが、こんなに理解の早い人たちは他にいなかった。間違いなく知の巨人である3人をお招きでき、大変光栄に思っています。
最初の対談のお相手の樋田さんは、“政治の師匠”として拝んでいる存在です。非常に優秀なロビイストとして、各方面で活躍されていますが、まずは簡単に自己紹介をお願いできますか。
樋田(以下:H):現在は株式会社ブロックチェーン戦略政策研究所の代表取締役をやっています。2014年7月から2018年10月末までは、日本ブロックチェーン協会の事務局長を務めていました。しばらくロビー活動は休んでいたんですが、業界の状況を見て、再開しなければいけないと思って、ブロックチェーンに特化したシンクタンクの会社を2022年1月に作ったところです。というのは、日本のブロックチェーン産業って、2017年頃は世界一だったんです。それが2018年にコインチェックの事件*1 が起きて、一気に規制が強化されて市場が萎んで停滞した。このままでは世界から取り残されると危機感を持ったわけです。
O:つまり樋田さんは、日本の仮想通貨業界の父、といっても差し支えない人。今、世の中を華やかに彩っている仮想通貨交換業の社長さんたちは、樋田さんに恩義を返すべきだと僕は思っています(笑)。
で、今日はブロックチェーンの持つ通貨的な性質ではなく、人類史における根本的な価値について話したいのですが、それは、一言で言えば、人間のコンセンサスがうまく取れるところです。町内会でも、学校のPTAでも、マンション理事会でも、リーダーを決めなくても、「こうした用途にこれだけの予算を使いたいけど、どう思いますか?」という意思決定が取れるアプリを作れてしまうのがブロックチェーンのすごさです。そのひとつがすでに実装が始まっているAlgaで、理論的にはこれは自治体にも国にも使えます。
ですが、理論と現実の間には大きな乖離がある。新しい技術で世の中を変えられるはずなのに、法律や規制が邪魔をしてうまくいかないと思っている若者はたくさんいるわけで、そこを突破するために必要なのが「政治」の力だと思うんです。そこで、長年ロビイストとして、理想と現実のバランスを取りながら物事を前に進めてこられた樋田さんの知見や経験を伺えたら、と。
H:本題から離れるかもしれませんが、まずは私のロビー活動をかいつまんでお話しするのがいいかもしれませんね。2014年3月7日に衆議院第一議員会館に行ったことが始まりです。2014年2月に、マウントゴックス*2 というビットコインの取引所がハッキングを受けて破綻しました。それを機に、政府が仮想通貨取引を禁止するかもしれないという記事が出たので、個人的に、政治家の先生のWebサイト経由で問い合わせをしたんです。当時は業界団体も何もなかったから、直接自民党の担当していた先生へ問い合わせました。そうしたらすぐに電話がかかってきて、明日、議員会館に来られますか、と。
O:投資家たちが大きな損害を被った事件だったんですよね。
H:そうですね。日本だと1000人規模だけど、世界中だと約13万人という被害者が出て、影響が大きかった。だけど、ビットコインには可能性があったので止めちゃまずいと思ったんです。仮想通貨や、それを支えるブロックチェーン技術が、インターネットの次に来る価値のインターネットになることがわかっていたので。
O:2014年の時点で見えていたんですね。
H:完全に見えていました。もともと私はエンジニアなので、政治に興味はあったものの、専任でやっていたわけではないんですよ。でも、これは動かなきゃならないと思い動きました。
ホームページから問い合わせたのは福田峰之先生で、当時は自民党にIT戦略特命委員会というのがあって、福田先生が事務局長、委員長が平井卓也前デジタル担当大臣。その2人が担当されていらっしゃったのが非常に良かった。
そこからロビー活動を始め、自民党で話し合われたんですが、当時は監督省庁も決まってなかったんです。経済産業省か金融庁かという話になったときに、どっちの省の官僚も拒否していたんだけど、政治判断で金融庁になって今に至ると。
O:ロビー活動というと、政治にうまく働きかけて、自分が通したい法律を通す、みたいなイメージを持ってる人も多いと思うんです。現実には、みんなの利益を考えて動かれるわけですよね。
H:はい。その「みんな」が指すのは主にステークホルダーで、業界全体として産業を育成していくという視点が大事になってきます。仮想通貨の交換業って本当に小さなところから始まりました。それを大きくするためには、公正なルールが必要になってくる。具体的には法律、税制、会計などの新たな整備が必要なのですが、それを作ることができるのは政治家だけなんです。要するに、政治家とは、「法を超える」人たち。対して官僚は、法の中でいかにものごとを進めるかを考える人たち。
O:わかります。政治家は法を拡張していく存在というか。
H:そうですね。例えばベンチャーの起業家って、法の枠組みのいちばん外側のギリギリのところ、あるいは1ミリはみ出すかどうかの線を狙って新規ビジネスを立ち上げたりするはずです。はみ出すとアウトと言われる可能性が日本では高い。アウトにならないように、OKの線を拡張していくのが政策なので、政治家や官庁、関係団体やステークホルダーに説明をして、法の枠組みを広げてもらうためのロビー活動を行ってきました。
当時は、今もそうかもしれませんが、ビットコインって、詐欺まがいのものだと思われていたんですよ。ある経営者に「おはじきみたいなもんでしょ」と言われたこともあります。その中で一生懸命説明するところから始めて、応援してくれる人を少しずつ増やしていった。2016年に、資金決済法に追加される形で、法律が成立するんです(2017年4月、改正資金決済法等の施行)。
O:法の拡張って、つまり、すでにあるコンテクストに合わせていく作業なんですね。
H:はい。アメリカだと、議員さんの名前の付いた新しい法律が作られたりするんだけど、日本では、慣習として、今ある法律の中に追加したり、今ある法律を修正していきます。
と、ここまで長々と話してきましたが、要するに、新しい業界ができて、成長して、業界内の会社に人が雇用され、給料が支払われて、会社と雇用者たちが納税することによって国が動き、大きくなっていく。この一連の流れを作ることができるのが政治と、プラスして、私たちのようなロビー活動をしている人たちだということです。
居酒屋で岸田さん、安倍さんのことを談義するけど、市町村の予算を知ってますか?
O:アメリカだと、スタートアップが技術で突き抜けて、法律を含め既存の枠組みを壊していく手法が目立つから我々も真似したくなるんですけど、日本だとやっぱり違うんですよね。関係各所と丁寧にコミュニケーションをとって、合意を得た上で産業を作っていくのが日本のやり方。
H:それもあります。やっぱり相談する案件を持っていく先が重要になります。ベンチャーの人って法律に困ると、省庁に相談に行きがちなんです。著作権法だったら文化庁とか。だけどそれは失敗の元。法を超える存在としての政治家へ相談しに行かなきゃいけないんです。政治家の先生に紹介してもらって省庁に行くと、いきなり幹部レベルが出てくる。話が早くて、私たちの場合は2年という短期間で法律ができたんです。
O:とても腑に落ちました。権利闘争とか社会運動みたいな動きではなくて、ピンポイントで政治家の先生のところに行くと。
H:もちろん市民運動とかデモとか、そういう運動が有効な場合もあるんですよ。そして私が自民党をもともと好きという話でも全然ないんです。2014年の仮想通貨をどうするかというときは、権力を持っているところにお願いするのが一番早かった。きわめて現実的な判断です。その後2022年に入って、自民党デジタル社会推進本部の下のNFT政策検討プロジェクトチームの座長を務めてこられた平将明先生に働きかけてきて、この5月に、岸田内閣の成長戦略にWeb3政策が入ることになっている(2022年4月現在)。これは本当にすごいことです。
O:僕は、そういうリアリスト・樋田さんを非常に信用しているんです。
H:ブロックチェーン業界って、潰されてもおかしくなかったんです。政治の力が発せられたことで、10年弱、ここまでやってこられた。もちろん、この先どうなるかわかりませんが、それは私の頭の中に強くあります。
O:いろんな産業の裏には、樋田さんのような努力が存在していると。
H:なかなかお会いすることはありませんが、いらっしゃると思います。だから私が言いたいのは、ベンチャー企業で法律や制度に困っていることがあったら、政治家に相談したらいい。国会議員を知らない人もいると思うんです。そういう人は、まずは自分の住んでいる県会議員さんとか市会議員さんに話をして、会社でこういうことがあって困ってると相談すれば、的確な人を紹介してくれるはずです。
私の場合はたまたま国会議員の先生のHPに問い合わせて電話をいただいたけれども、私は、自分の住む地域や出身地の議員さんを知っています。政治って何事も、国を云々論ずる前に、自分の足元を見ることが大事だと常々思っているんです。
O:本題につながるいいパスをいただきました。ここまで樋田さんの自己紹介とともに、物事を前に進めるために政治をどう使うか、という話を伺ってきました。この本のChaper01では、国家はDAOで実装することが理論上できるという話をしています。じゃあ自分の住んでいる地域で、DAOを使って、「自治」を自分たちの手に取り戻そうとしたときに、いったいどんな問題があるのか。今は何ができていなくて、何が必要なのかを樋田さんの観点からお聞きしたいと思っています。
H:難しいのですが、今は自分が暮らしている自治体ですね、都道府県よりももう少し小さい単位の市町村、そういった自治体の状況を把握する時間的な余裕がない時代なのかな、というのを感じます。例えば北欧の国々だと、サラリーマンが兼業で地方議員をやっていて、土日とか、平日の夜とかに委員会や会合を開いて、政策を決めて進めたりしていると聞いております。
翻って日本は、地方に行くと兼業の方もいますが、専業の議員さんが圧倒的に多い。だからこそきめ細かなサポートができるという良い面もあります。反面、一般市民の「参政」が少ないと思います。市民一人一人が参政をしていくことが、DAOを進めていくための土壌として必要なのではないかと思ってます。居酒屋で、岸田さんがどうだとか、安倍さんがどうだという大きな政治の話をしている人たちはたくさんいるんですよ。でも、自分の市町村の予算を把握している人って、どのくらいいますか?ということです。
O:民生費いくらとか、医療費いくらとか。
H:そうそう。水道料金なんかも含めて、収入と支出、予算と決算を知っておくのはすごく大事なこと。みんな国に対しては批判したり文句言ったりいろいろ言うんだけど、その前に、まずは自分の暮らす自治体なり、出身地でもいいんですけど、地元がどんな予算でどんなことをやっているのか。そこにコミットメントしたほうがいいよねと、私は思いますね。
O:ただ、素人的な感覚では、市とか自治体のレベルで自分が何か活動をしたとしても、世の中は変わらないんじゃないか、といった諦めを持っている人もいると思います。単位の小ささが、諦めにつながってしまうパターンというか。
H:まあ、既得権益ができているところはあるでしょうね。
O:ロビイストの樋田さんから見て、市などの単位で物事を前に進めるには、現状、どういった動きをすればいいと思いますか。
H:結局は国を動かすときと同じ構図になると思います。まず地域のステークホルダーがどんなふうに動いているか、じっくり話を聞きに行かなきゃいけない。案件によりますけど、商店街とか、企業のほうなら商工会議所とか銀行とか。そういうステークホルダーの人たち。それから議員さん。そして役人、市役所などの人たちですね。これら全体の関係性を見ることがとても大事です。
参考になりそうな具体例として、私は友人と一緒に三島市(静岡県)において、小水力発電マイニングの共創事業を市自体と進めております。市に採択されて、事業規模は小さいですが、2022年4月から導入されました。側溝とか用水路を使って発電するのが小水力発電ですが、これに、仮想通貨の取引承認計算時に使うプロセスであるマイニングを組み合わせるんです。三島に住んでいる私の仲間が、市会議員の先生とのつながりを得て、市の環境政策課を紹介してもらったことで進んだ事業です。
といっても、最初は市に断られたんです。最初に紹介されたのは別の課で、そこには断られた。そこで諦めずにまた議員さんに相談して、今度は環境政策課に行ったら、やりましょうという話になったんですよ。急展開の裏には、やっぱり議員さんの力があったと思います。並行して大事だったのは、ステークホルダーの人たちに説明して、巻き込んでいったこと。水利権を持ってる用水路組合の幹部の方々、地元の企業であったり、環境団体だったりしますが、応援者を増やしていったことも成功の要因です。金に強く、市民に弱いのが政治家です。だから先ほどの落合さんの質問に戻りますが、市でも国でも、構図は同じです。政治・役人・ステークホルダーの力学を理解し、どこを押せば前に進むかを実感として得るには、まずは身の回りの単位から動くことがむしろ有効だと思います。
「年間2000熟議」が実装可能 DAOのアクセシビリティが自治を変える
O:すごく納得できる話であると同時に、プロフェッショナルのロビイストでないと、難しい芸当だなとも思いました。当然ながら、誰でもできることではない。という中で僕がDAOで自治を取り戻そうというときに、利点となるのは「アクセシビリティ」だと聞いていて確信しました。要するにDAOは、政治家も役人もいない、参加するすべての人がフラットな議会のような場を、一瞬で作ることができるんです。その中で、30人中30人のランダムに選ばれた人たちが、ああでもない、こうでもないと議論して、最終投票をするという仕組みです。フラットな場なんだけど、それでも誰かがリーダーシップをとって前に進めていこうというトルクを生み出すことができると。
H:実現する仕組みは置いておいて、起きている現象だけを見ると、それは、さっき話した北欧と似ていますよね。市民の人たちが、たまに議員になるという。たまにといっても、意志をもってなっているわけだけれど、要するに「参政」が身近なところにある。
O:自治体の資料を見ても、市民がもっと自治にアクセスできるようにしようというアイデアや構想は以前からあったんですよ。ただ、実装ができなかった。それがようやくDAOで可能になったというコンテクストがあると思います。
H:そうですね。現実的には、国にDAOが実装されるには、たぶん30年くらいかかると思いますが。
O:そうやってきっぱり言ってくださるところが、リアリストの樋田さんです。嘘がないから信用できる。理想だけ語る人って、ある程度の脚色が絶対に入るので。
H:リアリストなのはその通りだと思います。だから私、人の嘘ってすぐわかっちゃう(笑)。リアルに事を動かさないと意味がないと思っているので、できないことは素直にできないと言います。できる範囲のことは全力でやるのが当たり前だと思っていますね。
それで30年かかるとして、今の間接民主制から、DAOは直接民主制になるわけだから、どうやって移行していくのか。ビジョンを示して、具体的なロードマップを段階ごとに描いていかなければいけない。先進的な自治体だけがDAOを採用して、それ以外は既存の制度がずっと残るような形になってはあまり意味がないですよね。国全体がDAOに移行していくような制度設計をどう構築していくのか、それを作るのは国なのか自治体なのかも含めた制度設計作りが、これからの課題。
O:その一歩目が、市民一人一人のラーニングだと思うんです。これまでお話しいただいた樋田さんのロビー活動は、習得するのに時間が必要ですよね。政治家や行政の人と関係性を作る時間が必要になる。政治家だって市民全員と等しく会うわけにはいかないから、全員が樋田さんと同等の能力を持つのはやっぱり難しいわけです。
対してDAOは、例えば「年間2000熟議」ものスループットが実装可能です。数をこなせるがゆえに、自治会や町内会、マンション理事会といったレベルから、提案して却下されるとか、提案して議決されるといったラーニングが容易になる。この学びの積み重ねが、樋田さんが指摘されたロードマップを進めていく上で有用だと思っています。
H:そのラーニングを通して、参政を、言い換えれば自分たちで事を動かすとはどういうことかを、体感していくことが肝ですよね。例えば我々は学校で「三権分立」を習いますけど、多くの人は、はあ?という感じでしょう、はっきり言って。
O:手触り感がないですよね。
H:そう。18歳になったら選挙に行きましょうとも言われるけど、選挙で国を変えられるという手触りもほとんどない。今、感じられていないそうした手触りを、DAOという仕組みで取り戻すことができたら、と思います。自分の暮らす地域で、小さな頃からDAOを使うことで、提案する、議論する、投票する、選挙に行く「癖」をつけていくというのかな、もっと言えば、それが当たり前の社会になっていくといいだろうと。
O:そうですね。DAOのような直接民主制は、法案がたくさん出て忙しくなりがちですけど、その点は技術で解決し、使う人の様々な負担を下げていくことができるはずです。
H:それは必要ですね。それからもうひとつ、DAOの実装に当たって考えなければいけないと私が思うのは、「任せたい人」たちの存在です。
今、様々な規模や目的のコミュニティを見ていると、力を持っている少数のおじさんたちが物事を決めていて、それ以外のほとんどの人は、彼らに依存しています。数で言えば、依存している人のほうが圧倒的に多いと思う。その中には、本当は自分も決める側に参加したいと思っている人もいれば、どっちでもいいと思っていたけど参加してみたら面白いと思う人もいるだろうし、一方で、誰かに任せたままでいたいと思う人だっているはずなんですよね。そういう状態のコミュニティにDAOを導入しても、果たして、一人一人の意思でもって投票が行われるのだろうか。DAOになったところで、誰かに薦められてとか、あるいは脅されて投票する、なんてことも考えられるわけです。
だから全員が自立すべき、という話ではありません。そうではなくて、むしろ「任せたい人」がそのままいられるようなコミュニティを、DAOは、あるいはマイクロDAOであるAlgaは、実現してほしいと思うんですね。今は自立して、仕事をし、稼ぎ、意見を言う、みたいなことが是とされがちだけど、コミュニティはメンバーが多様であったほうが豊かだし、持続可能性が高いんです。誰かに依存している人がいたっていいし、働いていない人がいたっていい。フーテンの寅とらさんみたいな人が場を和ませて、コミュニティを回していくことって、現実にはかなりある。Algaは多様な人間関係作りを強化するような道具になってほしいと思っています。
O:よくわかります。誤解されがちなんですが、DAOになったら、一億総活躍社会じゃないですが、全員が意見を持たなくちゃいけないと思ってる人もいるんですが、そうではない。DAOやAlgaの要点は「異議申し立て」のパスが常に開かれていることなんです。何かに違和感を覚えた人が、「違うと思う」と、声を上げたいときに、声を上げられるパスが存在していることが重要な点であり、そこから、先に述べたようなラーニングが始まっていくと思っています。
(書籍につづく)
*1:2018年1月26日、大手仮想通貨取引所「コインチェック」から仮想通貨のNEMがハッキングされて、日本円にして約580億円が不正に流出した事件。
*2:2014年当時、世界最大級の仮想通貨交換業者であったマウントゴックス社のサーバーから巨額のビットコインと顧客の預かり金が消失した事件。被害総額は470億円相当のビットコインと現金28億円。
書籍情報
『僕たちはメタ国家で暮らすことに決めた』落合渉悟(著)/フォレスト出版
ブロックチェーンが切り開く新しい国家の地平線
海の向こうでは理不尽な戦争や政治的な混乱――。
翻って国内に目を向ければ政治腐敗や富の不均衡、経済の停滞、人権軽視――。
未来の展望を築けない若者は、選挙に行く気力さえ持てない。
こんな世の中を大きく改善する可能性を持つ技術が現れた。
それが――ブロックチェーンだ。
ブロックチェーン技術を利用すれば、従来の国家的枠組みから完全に分離したバーチャルな“独立自治体”の創設も不可能ではない。
本書は「Ethereum界の奇才」と呼ばれるブロックチェーン技術の第一人者であるエンジニア・落合渉悟が、ブロックチェーンを基盤にしたDAO(Decentralized Autonomous Organizationの略=自立分散型組織)によるメタ国家を生み出すプロジェクト「Alga」を通して、Web3技術による新たな世界構築の可能性を探る。
仮想共同体の構想を通してDAOの本質を学ぶ!
プロフィール
落合渉悟
思想家/人権ハクティビストイーサリアム関連技術研究者/開発者/ブロックチェーンエンジニア大阪大学大学院情報科学研究科情報数理学専攻スマートコントラクト活用共同研究講座特任研究員
2016年よりブロックチェーンの高速化に関わる研究で実績を残し、現在はDAO(自律分散型組織)型自治プロトコル「Alga(アルガ)」ファウンダー。情報科学全般の広く深い知見に加え、制度設計の基礎を踏まえた洞察や、アクティビズムの実戦に即した民族学的分析に長けており、パブリックチェーンが社会に与える影響を遠く見通しながら多くのユニークなプロジェクトに知見や実装を提供している。とくに制度設計に精通しており、「the fairest democracy」というTEDxtalkはブロックチェーン時代の民主主義について世界的な議論を巻き起こした。
樋田桂一
ブロックチェーン戦略政策研究所 代表
大学在学中、東京めたりっく通信株式会社に入社。職業能力開発総合大学校電気電子系電子工学科を中退。14年9月に発足した一般社団法人日本価値記録事業者協会(JADA)に事務局長として参画。16年4月に一般社団法人日本ブロックチェーン協会へ改組。2018年10月まで事務局長として活動する。暗号資産(仮想通貨)に係る法整備、税制改正、会計基準などの策定に参画。国内での行政や事業団体等での講演多数。海外のカンファレンスへの登壇(台湾、韓国、ウクライナ)。22年1月株式会社ブロックチェーン戦略政策研究所を設立、一般社団法人日本ブロックチェーン協会アドバイザーに就任。22年2月一般社団法人DeFi協会アドバイザーに就任。
Source: https://www.neweconomy.jp/features/bokumeta/235677