米国財務会計基準審議会(FASB)、暗号資産に公正価値会計を採用へ
米国財務会計基準審議会(FASB)が、ビットコインやその他の暗号資産(仮想通貨)の会計処理時の価格測定に、公正価値測定を用いるべきであるとの見解を10月12日に示した。
FASBは暗号資産の会計処理と開示において、同審議会のプロジェクトで対象となる暗号資産を保有する企業が、その資産をどのように測定すべきかについて議論していた。FASBはその議論内容および結論をレポートの形で公開した。
なお公正価値とは、資産価格の測定日に市場参加者間の通常取引において、資産の売却で受け取るまたは負債の移転で支払うであろう価格のことを言う。
FASBは具体的に次の3つを要求した。
(1)暗号資産を、FASBが示すガイダンス「Topic 820」の「公正価値測定」を用いて、公正価値で測定すること。
(2)公正価値の増減を報告期間ごとに包括利益で認識すること。
(3)暗号資産を取得するために発生した特定の費用(手数料等)を費用として認識する(ただし、別途要求される業界の専門的な測定ガイダンスに従う場合を除く)。
またFASBは次の3つを検討し、結論を示した。
(1)活発な市場がない暗号資産に対する様々な測定代替案を検討。そして代替案を追求しないことを決定。
(2)暗号資産の公正価値測定の適用に関する実施ガイダンスを提供するかどうかを検討。今回のプロジェクトの一環として追加的な測定ガイダンスを提供しないことを決定。
(3)暗号資産の測定について、民間企業と差異を設けるべきかどうか。測定と認識の要件はすべての企業で同じであるべきと判断。
今後FASBは暗号資産の財務諸表上の開示および移行方法について検討していくとのことだ。
なお日本では暗号資産に対する民間企業の会計処理は、活発な市場がある場合、期末の時価評価を行い、差益は税務に関連するものとなっている。
FASBとASBJ、暗号資産会計の会合開催
FASBと日本の企業会計基準委員会(ASBJ)の代表者は、FASBの今回の見解が示される前日の10月11日に暗号資産の会計処理を含めた国際的な会計基準開発のため会合を行なっていた。FASBが10月11日に発表したことで明らかになっている。
具体的にその場で、FASBとASBJの代表者がそれぞれの活動の最新情報を提供し、のれんの会計処理、暗号資産の会計処理、財務報告の範囲と境界など、両者が関心ある議題について議論したという。
FASB議長のリチャード・ジョーンズ(Richard R. Jones,)氏は「ASBJを新しいオフィスに迎え、2019年以来の直接の会合を行えたことを嬉しく思います。私たちの議論は、暗号資産や金融商品など、それぞれのステークホルダーが優先事項として特定したトピックに焦点を当てました。ASBJとの年2回のフォーラムでは、基準が世界中の投資家やその他の資本配分者に、より有用な情報を提供し続けることができるかについて貴重な洞察を得ており、次回の合同会議でもこうした議論を続けたいと考えています」とリリースで伝えている。
ASBJの委員長である川西安喜氏は「この二国間会議には初回から参加していますが、ASBJの委員長に就任してからは初めてのことです。今回、3 年ぶりにFASBの新しいオフィスで直接会議を開催できたことを嬉しく思います。これまでの会議と同様、様々な問題につ いて実りある議論が行われました。今後も引き続き議論を続けていきたいと思います」と述べている。
日本の動向
10月12日に、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)の税制検討部会のメンバーらが自民党web3PT事務局長の塩崎あきひさ議員を表敬訪問している。
そして同部会の副部会長である竹ヶ原圭吾氏はツイートで「自民党web3PT事務局長の塩崎あきひさ議員と暗号資産の税制改正、特に自社発行のみならず他社が発行した暗号資産を保有する場合についても、長期保有目的の場合は時価評価対象外とすることについて意見交換しました!」と伝えている。
参考:FASB、FASBとASBJ、JCBA
images:iStocks/Rawpixel
デザイン:一本寿和
Source: https://www.neweconomy.jp/posts/266391