日本取引所グループが日立製作所・野村證券・BOOSTRYと協業
東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所等を傘下に持つ持株会社日本取引所グループ(JPX)が、国内初のブロックチェーンを用いた「デジタル環境債」の発行に向け、日立製作所・野村證券・BOOSTRY(ブーストリー)と協業を開始したことが4月15日分かった。
この「デジタル環境債」は「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」の名称でホールセール(金融機関などの法人)向けに発行される。
これまでの環境債(グリーンボンド)で発行体・投資家双方で課題とされていた、グリーン投資にかかるデータの不透明性やデータ収集にかかる作業の煩雑性に対し、ブロックチェーンなどのデジタル技術を活用することで、透明性の向上及びデータ収集の効率化を目指す債券となっており、公募のSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)として実施されるという。
発表によると協業各社の役割として、JPXは「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」の発行元となり、日立は発電量/CO2削減量のデータを記録・管理する「サステナブルファイナンスプラットフォーム(モニタリングデータ提供機能)」の提供・保守。
野村證券はデジタル債・グリーンボンドの発行支援と「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」の引受を行う。そしてBOOSTRYについては同社開発のブロックチェーン基盤「ibet for Fin」と連携しデジタル環境債発行に利用するシステムの提供と保守および「ibet for Fin」への発電量/CO2削減量の記録の保存を行うとのことだ。
デジタル環境債によって調達した資金使途の透明性を高めるため、日立のデジタル技術を活用して、資金充当した発電設備の発電量を自動的に計測し、CO2削減量に換算する仕組みを構築するとのこと。これにより投資家がいつでも外部からモニタリングできる仕組みを構築し、年次のレポーティングだけではない高い透明性を目指すとしている。
またこの日立のデジタル技術を、BOOSTRYの「ibet for Fin」上に発電量/CO2削減量を記録することで、データの透明性・適時性を高めることが可能とのことだ。
JPXはこれらの対応により、将来的にはサステナビリティ目標の達成状況によって利率などの条件を自動的に変更させるサステナビリティ・リンク・ボンドへの応用が検討可能としている。
なお投資家が発電量をモニタリングできる仕組み(デジタル・トラック機能)については、順次完工予定の各発電設備において稼働後速やかに実装される予定とのことで、「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」による調達資金は開発する発電設備に対し充当されるとのことだ。
JPXは今年2月、「環境債」をセキュリティトークン(ST)として発行する「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」の検討を開始していた。このデジタル環境債発行は、デジタル化を通じた債券発行に係る事務全体の効率化をする他、JPXがグループ全体で2024年までに達成を目指すカーボンニュートラルに向けた資金調達を目的としたものであることが発表されていた。
2月の発表時よりBOOSTRYの「ibet for Fin」採用は決定していた。「ibet for Fin」を利用することにより、同債券の発行から期中管理、償還までの業務プロセスを電子的方法により完結させる他、システム上で社債原簿の管理を行うことにより、従来型の社債では困難であった発行会社による社債権者の継続的な把握等を可能にするとのことだ。
なお「ibet for Fin」にはエンタープライズ向けブロックチェーン基盤「クオーラム(Quorum)」が採用されている。
STOとは
STOとは、発行会社が従来の株式や社債等に代わり、ブロックチェーン等の電子的手段を用いて発行するトークンに株式や社債等を表示する「セキュリティ・トークン」により資金を調達するスキームだ。2020年5月1日の金融商品取引法改正及び関連する政省令の改正施行により「電子記録移転有価証券表示権利等」として規定され、法令に準拠した取扱いが可能となっている。
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参考:日立製作所
デザイン:一本寿和
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Source: https://www.neweconomy.jp/posts/215833