PoS銘柄中心に市場急落、SEC提訴によるクラーケンのステーキングサービス停止で(暗号資産 週間マーケットレポート 2/5-2/11)

2/5~2/11週のサマリー

  • 暗号資産取引所Krakenが無登録でのステーキングサービス提供で米国証券取引委員会(SEC)から提訴され、米国内でのステーキングサービス停止と3,000万ドルの罰金支払いで和解
  • 上記を受けてプルーフ・オブ・ステーク(PoS)銘柄を中心に暗号資産市場は急落し、Krakenと同様のサービスを取り扱う米Coinbaseなどの暗号資産関連株も大幅下落
  • 5日に雨宮副総裁に打診と報道された日銀総裁人事、一転10日に植田和男氏に固まる

暗号資産市場概況

2/5~ 2/11週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲6.65%の2,868,350円、ETH/JPYの週足終値は同▲8.53%の201,660円となった(※終値は2/11の当社現物EOD[2/12 6:59:59]レートMid値)。

週初は、「政府が日銀次期総裁就任を雨宮副総裁に打診」との報道を受けて、黒田現総裁による緩和路線が継続されるとの観測が強まり、足もとで燻っていた日銀の急激な政策修正に対する見方が後退した。日米金利差縮小に対する期待も後退したことでドル円は132円台半ばまで円安方向に推移し、円建て暗号資産がドル建て対比でアウトパフォーム(相対的に強く推移)する場面が見られたが、全般には強い内容となった前週の米雇用統計後の流れが継続し、暗号資産市場は上値の重い展開が続いた。

週央にかけては、パウエルFRB議長による「2023年はインフレが大幅に鈍化する1年となる」との発言などを受け、利上げ鈍化期待から暗号資産市場は強含んで推移する場面が見られた。

しかし、10日には暗号資産取引所Krakenが証券法に基づく登録を行わずに暗号資産のステーキングサービスを行っているとして米国証券取引委員会(SEC)から提訴され、米国でのステーキングサービスの停止と3,000万ドルの罰金支払いを条件に和解するというニュースが出ると、米国内でのステーキングサービスの全面禁止が噂され、PoSへ移行したイーサリアムを中心に暗号資産市場は急落、Krakenと同様のサービスを取り扱う米Coinbaseなどの暗号資産関連株も大幅下落した。

その他、同日には日銀次期総裁について前述の雨宮副総裁ではなく経済学者の植田和男氏を起用する方針だと明らかになり、ドル円が一時130円付近まで円高方向に振れる場面が見られたが、植田氏が現行の緩和政策の維持に言及すると再び131円台半ばまで値を戻した。

当週は、週後半にかけて米規制当局絡みのネガティブなヘッドラインにより暗号資産および暗号資産関連株は大幅に下落したが、下落により足もとでロングポジションの積み上げが進んでいた先物市場の清算が相応に進んだほか、米運用大手ARK Investが下落局面で暗号資産関連株に対する追加投資を行うなど、市場全体が弱気に転じるには至っておらず、今週の暗号資産市場は米消費関連指標の動向を見ながらではあるが、FTXショック前の水準(21,000ドル付近)を背にした底堅い推移が想定される。

BTC/USD週間チャート(30分足)

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)

BTC/JPY週間チャート(30分足)

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)

BTC/USD(橙色), ETH/USD(水色) 週間騰落率(30分足)

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)

2/5~2/11週の主な出来事

2/12~2/18週の主な予定 

今週のひとこと「SOPR」

SOPRとはSpent Output Profit Ratioの略称で、実現価格(USD)を作成時価格(USD)で割ったオンチェーン指標です。言い換えると売却価格/購入価格を意味し、SOPR>1の場合には市場取引者が利益を出していること、1>SOPRの場合には市場取引者が損失を出していることを表します。

過去3年間のSOPRの推移(BTC)をみると、以下のことが確認できます。

1. 強気相場(赤枠)では、市場取引者が損失を出すことを拒んで利益を伸ばそうとする傾向があるため、損益分岐点である1に近付くと売りが控えられ、SOPRが1を下回り難い。

2. 弱気相場(青枠)では、市場取引者が大幅な損失を防ぐために損益分岐点である1を待って売りを加速させる傾向があり、SOPRが1を上回り難い。

3. 結果として、SOPR>1で安定的に推移している期間は相場が上昇基調、1>SOPRで安定的に推移している期間は相場が下落基調にある。

以上を参考に現在(緑枠)の推移を見てみると、BTCは弱気相場から強気相場への転換点にあり、足もとで1を回復したSOPRが、今後も安定的に1以上を保つことができれば更なる相場上昇が期待できると捉えることができます。

SOPRはシンプルなオンチェーン指標ですが、このように相場とも密接に関わっているため、1つの指標として今後の推移も参考にしてみてはいかがでしょうか。

過去3年間のビットコインSOPRとビットコイン価格(ドル建)

(glassnode より SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)

このレポートについて

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Source: https://www.neweconomy.jp/features/sbivct/295859