NFT盗難被害額が1年で約136億円相当に
ブロックチェーン調査会社の英エリプティック(Elliptic)が8月24日に発表したところによると、先月7月までの1年間で1億ドル(約136億円)以上におよぶNFTが盗まれたという。急成長しているデジタル資産が、クリプト(ブロックチェーンや暗号資産の総称)のハッキング問題の新たな最前線となったためだ。
2021年にNFTの市場が急騰したのは、暗号資産に富む投機家たちが、価格上昇に伴う利益を期待して、この資産に何十億ドルも費やしたからだ。しかし今年5月と6月に暗号資産の価格が暴落して以来、NFTの価格と販売量は急落している。
エリプティックは報告書で「NFT市場が下落しても詐欺が横行しており、7月には過去最高のNFT盗難報告件数を記録した」と述べている。
同社によると、ソーシャルメディア経由のセキュリティ侵害が急増しており、2022年のNFT盗難の23%を占めたという。窃盗犯は1回の犯行で平均30万ドルを得ているとのことだ。
また全ての犯罪が公表されているわけではないことから、NFTの盗難の本当の規模はもっと大きい可能性があるとエリプティックは付け加えている。
ハッキングや詐欺に関してクリプト業界は長い間悩まされており、世界中の規制当局はサイバー犯罪における暗号資産の利用について、益々懸念をしている状況だ。
エリプティックは、NFTプラットフォームにおけるマネーロンダリングの金額を800万ドルと報告している。しかし、NFT市場の資金価値のうち3億2900万ドルは、資金の出所を隠すためのいわゆる暗号資産ミキシングサービスからもたらされたとエリプティックは主張している。
そのようなミキシングサービスの1つであるトルネードキャッシュ(Tornado Cash)は、今月米国から制裁を受けるまで、NFT詐欺の収益の半分強の資金洗浄に使われていたとエリプティックは述べている。
米国当局が北朝鮮のラザルスグループ(Lazarus Group)と関連づけた今年4月の5億4000万ドルの盗難事件を引き合いに出し、エリプティックは「NFTベースのサービスには、制裁対象の団体や国家が支援するNFTサービスによる脅威が大きくなっている」と説明している。
NFTとは
「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」とは、代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を持つ。そのためNFTを画像や映像などのデジタルデータと紐付けることで、デジタルデータの個別の価値を表現することに活用されている。
なおNFTという言葉は現在幅広く活用されており、活用するブロックチェーンやマーケットプレイスの種類によって、その機能や表現できる価値が異なる可能性があることには留意が必要だ。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
NFTs worth $100 million stolen in past year, Elliptic says
Reporting by Elizabeth Howcroft; editing by Jason Neely
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
images:images:Reuters
Source: https://www.neweconomy.jp/posts/254796