米財務省、暗号資産ミキシング企業を制裁へ。
米国政府は暗号資産(仮想通貨)のミキシング行う企業トルネード・キャッシュ(Tornado Cash)に対し、北朝鮮を含むハッカーのサイバー犯罪収益の資金洗浄を手助けしていると非難し、制裁措置を8月8日に発動した。
ミキシングとは、暗号資産の取引データを組み合わせることで、利用者のプライバシーや匿名性を維持するために活用される技術だ。
米国財務省の高官によると、同省が問題ありと認定した最大規模のミキサーであるトルネード・キャッシュは、2019年に誕生して以来、70億ドル(約9,444億円)以上の暗号資産を資金洗浄したとのことだ。
米財務省のトルネード・キャッシュへの措置内容は、トルネード・キャッシュの米国内の資産を凍結し、米国人がトルネード・キャッシュに関連する取引を原則禁止するというものだ。
また米財務省によれば、北朝鮮政府が支援する有名なハッキンググループであるラザルス・グループ(Lazarus Group)は、政治的、時には金銭的な動機で数多くのデータ侵害を行っており、トルネード・キャッシュを通じて少なくとも4億5,500万ドル(約614億円)の資金洗浄を行っているとのことだ。
なおラザルス・グループは、既に米国の制裁下にある。同グループは、2014年末のソニー・ピクチャーズへの侵入をはじめ、歴史的に多数の重大なデータ侵害をしてきた。
米韓当局によると、北朝鮮は数千人のハッカーを支配し、暗号資産を含む資金を盗み、兵器関連のプログラムの資金源にしているという。
北朝鮮平壌当局は、この対応を避難している。ちなみにトルネード・キャッシュとニューヨークの国連北朝鮮代表部は、ロイターからのコメントの要請にすぐには応じなかった。
トルネード・キャッシュは、6月のハーモニー(Harmony)へのハッキングや、先週のNomad(ノマド)のハッキングでも約1億ドル(約135億円)の資金洗浄に使われたと財務省は発表している。
米財務省がトルネード・キャッシュに対して事前に変更を求めたにもかかわらず、犯罪行為が続いたため、今回のこの措置に至ったとのことだ。
また5月には、米国財務省は暗号資産ミキシング企業ブレンダー(Blender)も標的にし制裁を科していた。数千の暗号資産アドレスから暗号資産をプールしスクランブルするソフトウェアツールに対しては初めての制裁となっていた。
ハッキングは長い間、暗号資産プラットフォームを苦しめてきた。そして専門家は、トルネード・キャッシュがこれらの犯罪に一役買っていると述べている。
暗号資産関連の分析企業であるエリプティック(Elliptic)の共同設立者であるトム・ロビンソン氏は「トルネード・キャッシュはサイバー犯罪者や国家に支援されたハッキンググループにとって人気のある重要なツールです。私たちの分析によると、ランサムウェア、ハッキング、詐欺などの犯罪収益がトルネード・キャッシュを通じて少なくとも13億ドル(約1,754億円)洗浄されています」とコメントした。
米国財務省の措置に対応する形で、米ドルステーブルコインUSDCを発行するサークル(Circle)社は、制裁対象となったコントラクトアドレスをブラックリスト化した。またGithub(ギットハブ)は、トルネード・キャッシュの開発者らのアカウントを削除した。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Daphne Psaledakis, Christopher Bing and Ismail Shakil; editing by Grant McCool)
翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)
images:Reuters
Source: https://www.neweconomy.jp/posts/250976