破産したボイジャーデジタルのバイナンスUSへの資産売却案が初期承認、米国国家安全保障上の懸念残る
破産した暗号資産(仮想通貨)レンディング企業ボイジャーデジタル(Voyager Digital)が、バイナンスUS(Binance.US)への10億ドルの資産売却案について裁判所の承認を1月10日に受けたことが明らかになった。
そしてボイジャーはこの取引の米国の国家安全保障審査の迅速化を求めている状況だと伝えた。
ニューヨークのマイケル・ワイルス(Michael Wiles)米国破産判事は、ボイジャーがバイナンスUSと資産売買契約を締結し、売却に関する債権者の投票を募ることを認めたが、これは将来の法廷審問まで確定はしない。
ボイジャーの弁護士ジョシュア・サスバーグ(Joshua Sussberg)氏は、ボイジャーは、米国企業への外国投資の国家安全保障上のリスクを審査する省庁間機関である米国対外投資委員会(CFIUS)が連休中に提起した懸念に対応したと1月10日に法廷審問の中で述べた。
ボイジャーは、CFIUSが取引に反対するような問題があれば対処するつもりであるという。
またサスバーグ氏は「問題の問い合わせに対応するだけでなく、このプロセスを進めるために自主的に申請書を提出するよう、バイナンスとその弁護士と調整している」と伝えている。
CFIUSは、昨年12月30日の裁判所への提出書類で、その審査が当事者が取引を完了する能力、完了のタイミング、または関連する条件に影響を与える可能性があると伝えていた。
さらにサスバーグ氏は「バイナンスの取引には、2000万ドルの現金支払いと、ボイジャーの顧客をバイナンスUSの暗号資産取引所に移管する合意が含まれている」と伝えた。ボイジャーの顧客は破産後の7月以来、初めて引き出しができるようになる内容だ。
ボイジャーは、バイナンスUSへの資産売却により、顧客がボイジャーの破産申請時の預金価値の51%を回収できると見積もっている。
またサスバーグ氏は「CFIUSが取引を阻止した場合、ボイジャーは手持ちの暗号資産で顧客に返済することを余儀なくされ、ボイジャーの顧客への支払いは少なくなるだろう」と伝えている。
現在、米国は中国の対米投資を阻止するためにCFIUSを利用することが増えている。
バイナンスは、中国生まれのカナダ人であるCZ(Changpeng Zhao)氏が所有しており、定まった本社はない。また同社は米国検察当局によるマネーロンダリング調査の対象となっている。そしてカリフォルニア州パロアルトに本拠を置くバイナンスUSは、その取引所はバイナンスのメインプラットフォームから完全に独立しているとしている。
ボイジャーの売却案は、CFIUSに加え、米国証券取引委員会や各州の証券規制当局からも反対されていた。ボイジャーの取締役であるグレン(Glenn)氏は、これらの反対にもかかわらず、ボイジャーの売却を進めることを認めた。今後、証券規制当局が売却の最終承認に異議申し立てできるようになる。
ボイジャーは、TerraUSDとLunaが暴落し、暗号資産業界に衝撃を与えた数カ月後の昨年7月に破産を申請した。
ボイジャーは当初、FTXトレーディングに資産を売却する予定だったが、昨年11月にFTXが顧客の出金騒動と詐欺疑惑で倒産し、創業者のサム・バンクマン=フリード(Sam Bankman-Fried)氏が逮捕されたため、この取引は白紙になっていた。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Dietrich Knauth; Editing by David Gregorio and Josie Kao)
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Source: https://www.neweconomy.jp/posts/287549