【取材】Cygnos Capitalがクリプトヘッジファンド運用開始、国内適格投資家も対象に | あたらしい経済

Cygnos Capitalがクリプトヘッジファンド運用開始

シンガポール拠点のファンド運営会社であるシグノスキャピタル(Cygnos Capital)が、「ドル建て暗号資産トレーディングファンド」および「ステーブルコイン建て暗号資産トレーディングファンド」の運用を正式に開始したことを9月15日に発表した。

なおシグノスキャピタルは、国内暗号資産(仮想通貨)取引所ビットバンク(bitbank)の元COOである三原弘之氏が立ち上げたファンド運営会社だ。

今回運用開始した両ファンドは、ボラティリティの大きい暗号資産(仮想通貨)マーケットへのエクスポージャーを取りたい日本国内外の投資家向けに開発・組成したとのこと。

発表によると「ドル建て暗号資産トレーディングファンド」となるCygnosファンド I は、海外投資家および国内適格機関投資家・特例業務対象投資家等向けのファンドだ。このファンドは適格機関投資家等特例業務の金融庁への届出を完了しているとのこと。

Cygnosファンド I では、web3等のトークンに直接投資せずとも、関連する暗号資産銘柄のボラティリティを活かし、アービトラージやデルタニュートラル等の多様な投資戦略を擁するクリプトヘッジファンドの戦略へ分散投資する機会を、日本国内外の投資家へ提供するという。

また「ステーブルコイン建て暗号資産トレーディングファンド」となるCygnosファンド II は、日本国外に在住する認定投資家に対して、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ステーブルコイン(USDC・USDT)建てのそれぞれの通貨で配当を行うクリプト建てファンドとのことだ。

両ファンドの特徴としては「海外クリプトヘッジファンドのトレーダーの複数の戦略への分散投資」と「トークン現物への投資を行うファンドではなく、デリバティブ取引を中心とする戦略への投資」であるとのこと。

また両ファンドとも、投機ではない投資としてのクリプトファンド商品を実現させるために、アービトラージやデルタニュートラル等のトレーダーの複数の戦略へ分散投資を行っているとも説明されている。

なお両ファンドの運用資産の総額の70から80%は、日本国外居住の投資家から出資される予定となっているが、今後投資家の居住地域の規制を遵守しつつ、グローバルに運用されるファンドとなるべく動いていくという。

また現在暗号資産建てで投資が可能なファンドは、日本国外在住者のみとなっているが、日本在住の投資家の方向けにも暗号資産建てで投資可能なファンドの提供を検討しているという。

なおシグノスキャピタルは、適格機関投資家でマルイチグループCEOの加藤順彦氏より同ファンドへの出資を受けたことも今回併せて発表している。

Cygnos Capital代表三原弘之氏へ取材

「あたらしい経済」編集部はCygnos Capital代表三原弘之氏へ取材を行った。

−−日本法に準拠する形でファンドを組成するために、具体的にどのようなことに苦労されましたか?

トークン現物への投資を行う所謂クリプトファンドはWeb3の流行により日本でも増えてきましたが、暗号資産を証拠金としてトレーディングを行うファンドは多くなく、あまり前例がない中で手探りで弁護士の先生と会議を重ねました。

例えば、暗号資産で出資した場合に、法務面・税務面からどの様な解釈がされるのかを議論し、結果として一旦は日本国内向けのCygnosファンド I では暗号資産は受け付けずに全てドルで出資を受けることになりました。

ビットコインやイーサリアムで投資したいというお声も聞いているので、今後日本国内向けにも暗号資産での出資を受け付けていきたいと考えています。

−−またファンドの運用プロセスについて、具体的に説明していただけますでしょうか?

投資家の方から出資いただいた資産を証拠金に、様々な戦略に分散投資した上で、デリバティブ取引での運用を行っていきます。この運用のパフォーマンスは外部の独立した会社が毎月計算を行い、投資家の方へレポートが送付されます。

クリプト系企業ではあまり一般的ではなく驚かれることもありますが、更にファンドに対して年次の外部監査も実施されます。

−−3ACなどシンガポール拠点のクリプト企業の破産などありますが、シンガポールの規制現状はいかがでしょうか?

昔シンガポールの規制は日本より緩いと認識されていた時期もありましたが、全体として個人投資家向けの事業への規制は強まってきています。LUNAや3ACの事件を契機により拍車がかかり、今後更に厳しくなることは確実です。

Binanceやその他の所謂無国籍取引所がシンガポールを去り、その他の国へ移転した事例もかなり聞いています。

しかし、機関投資家や認定投資家等の自身でリスク管理を行えるとされている層の投資家については、全く状況が異なります。シンガポールの機関投資家やファミリーオフィスがクリプトへ参入・投資するというニュースは直近でも増えており、今後もシンガポールは世界中からクリプトの人材や資本を集めていくだろうと想定しています。

マルイチグループCEOの加藤 順彦氏へ取材

また「あたらしい経済」編集部は、マルイチグループCEOの加藤順彦氏へ取材を行った。

−−クリプトヘッジファンドの可能性は、どのように考えていますか?

既に日本国外では大きなマーケットを獲得しつつあり、中長期的にも期待値は高いと思ってます。ただそれ以上に10年の付き合いの 起業家三原弘之さんの胆力・実現力に期待しているというのが本心です。

images:iStocks/BadBrother
デザイン:一本寿和

Source: https://www.neweconomy.jp/posts/259616