破産申請直前でウォレットへ移管した顧客には返還されず
昨年11月に破産申請したブロックファイ(BlockFi)は5月11日、同社の無利息口座(ウォレット口座)に資産をもつユーザーへ2億9700万ドル(約399.8億円)を返金する許可を裁判所から得た。ただし、同社の破産申請直前になって有利子口座から無利息口座に資金を移動しようとした顧客については、返還されなかった。
今回の裁判でニュージャージー州トラントンのマイケル・カプラン(Michael Kaplan)連邦破産判事は、ブロックファイのウォレットプログラム(無利息口座)に預けられた預金は顧客のものであり、利息は支払われず、その預金はブロックファイのその他資金とは別に保管されていると裁定。またカプラン判事は、有利子口座をもつ顧客については預金を所有していることにはならず、有利子口座の顧客の預金はブロックファイに引き渡され、より広範な融資業務に使用されたと判決を下している。
フロックファイは2022年に倒産した複数の暗号資産関連業者のうちの1社で、顧客資金の所有権に関する問題はセルシウスネットワーク(Celsius Network)とボイジャーデジタル(Voyager Digital)の倒産でも提起されている。これらのケースで裁判官は、有利子口座の資金は破産した会社の財産であり、他の資産と共にプールされ、後日すべての債権者への返済に充てられるという判決を下している。
ブロックファイは破産申請直前の11月10日、アプリの顧客向け機能を完全に無効化することなく口座を凍結したことで、ブロックファイにおける2種類の口座区分(有利子・無利子)は泥沼化。カプラン判事が「混乱・誤解・不満」と表現した状況を生む結果となった。
約48,000人のブロックファイの顧客は、11月10日のブロックファイのシャットダウン中に3億7500万ドル(約504.9億円)を有利子口座からウォレット口座へ移そうとし、アプリ内とメールにて移管完了の連絡を受けたという。これら顧客の弁護士はブロックファイに対し、顧客の資金転送を尊重し、これらの顧客にも資金を返還すべきだと主張している。
しかしブロックファイは、2種類の口座間送金を完了させるために必要なバックエンド作業を行っていなかったと主張。このことについてカプラン判事は「同社のサービス規約では、広範なシャットダウンの一環として送金要求を拒否することを認めている」と裁定。「ごく簡単に言えば、ユーザーインターフェイス上の顧客の引き出しまたは転送要求は、デジタル資産を自動的に転送することはなかったし、今後もない(つまりブロックファイの意思による処理で資金は転送されるという判断)」と述べている。
ブロックファイの弁護士あるマイケル・スレイド(Michael Slade)氏は以前に法廷審問にて、「有利子口座からウォレット口座へ移そうとした3億7500万ドル(約504.9億円)の顧客譲渡」を認めると、ウォレット口座顧客の回収額が著しく希薄になり、ブロックファイが固定資産プールから追加のウォレット債権を支払う方法を整理するのが現実的に難しくなるとし、顧客の資金を一切返せなくなる可能性があると主張していた。
ブロックファイは昨年11月に連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請。暗号資産(仮想通貨)市場の変動と破綻した暗号資産取引所FTXへのエクスポージャーを理由に、同取引所から顧客資金が消失していることが明らかになり崩壊した。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
BlockFi gets court permission to return $297 million to Wallet customers By Dietrich Knauth
Reporting by Dietrich Knauth, Editing by Alexia Garamfalvi and Cynthia Osterman
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters
Source: https://www.neweconomy.jp/posts/313434