1人あたり5BTCを無料配布、ギャヴィンがサトシに提案したビットコイン初のフォーセット

ギャヴィンがサトシに提案したビットコイン初のフォーセット

ビットコインを発明し、未だその正体が分かっていないサトシ・ナカモト。そんなサトシが残した約2年間の文章を、小宮自由氏の解説と共に紹介する連載「サトシ・ナカモトが残した言葉〜ビットコインの歴史をたどる旅」の第40回。

まずサトシのメールの前に、本連載の元になっている書籍『ビットコイン バイブル:サトシナカモトとは何者か?』の著者フィル・シャンパーニュ氏の解説も掲載する。

フィル・シャンパーニュ氏の解説

現在はビットコインでコア開発リーダーを務めるギャヴィン・アンドレセンが、「ビットコイン・フォーセット」*1 を書いたことを告知した。これは、訪問者一人当たり、5ビットコインを無料で配布するというものである。サトシは、誰も提案しなければ自分も同じアイデアを持っていた、と返答した。

【訳注】
*1 faucet「蛇口」の意味。現在はテスト用のコインを配る仕組みに対して様々な暗号資産において広く使われる。

サトシ・ナカモトの投稿

それではサトシの投稿をみていこう。

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Re:freebitcoins.appspot.comで無料の5ビットコインを獲得

サトシ・ナカモト 2010年06月18日 午後11時08分34秒

(注:斜体部分は、サトシ以外の者の質問を指す)

引用:Gavin Andresen 2010年06月11日 午後05時38分45秒

私自身のビットコインでの初のコーディング・プロジェクトとして、実に愚かなことを実施すると決めました。ビットコインを配布するウェブサイトを作りました。https://freebitcoins.appspot.com/です。

訪問者一人当たり、5ビットコインで、早い者勝ちです。開始に当たって1100ビットコインを補充しました。うまくいく確信が持てたら追加します。

なぜか?ビットコイン・プロジェクトを成功させたいからです。人々がコインをたくさん獲得してお試しできれば、成功に近づくと思います。自分のノードがコインを生成するまで待つのはイライラするかもしれず(将来は今よりずっとイライラがたまるようになります)、ビットコインを買うのもまだちょっと野暮ったいです。

お試しで無料のコインを取得してみて下さい。何に使うかも分からないぐらいすでにたくさんビットコインを持っていても構いません。お試しでゲットしたら寄付で返して下さい。アドレスは15VjRaDX9zpbA8LVnbrCAFzrVzN7ixHNsC *1です。

最初のプロジェクトに素晴らしいものを選んでくれましたね。ナイスな仕事です。他に誰もやらなければ、私もまさにこれと同じことを計画していました。50 BTCの生成が難しすぎるなら、新規加入の利用者は今すぐお遊び用のコインを入手できます。寄付でフォーセットを満タンに補充できるといいです。ディスペンサー(分配機)の収支バランスの表示を見れば、満タンにしようという気にさせてくれます。

フォーセットに資金を追加したい利用者向けに、ページ内に寄付用のビットコインアドレスを載せた方がいいです。寄付を受けとるたびに新しいアドレスに更新するのが理想的です。

後に、ビットコインの価値が上がると、サトシはビットコイン・フォーセットの1 BTCへの引き下げを提案した。*2

Re:freebitcoins.appspot.comへの寄付を求めています!

サトシ・ナカモト 2010年07月16日 午前02時02分07秒

引用:Gavin Andresen 2010年06月12日 午後07時15分46秒

ビットコイン・フォーセットはスラッシュドット効果をとても巧みに利用しています・・・、無料配布用のコインがなくなったこと以外は。昨晩、フォーセットを補充してから5000以上のビットコインが流出してしまいました。

初期の頃に数万のコインを生成した古株の人たちへ。多くの人がビットコインをお試しできるように、フォーセットに少し送ってもらえませんか? 大半が失われたのは確かですが(スラッシュドットから遠巻きの野次馬が大勢来ていて、獲得した5ビットコインを使うほど長くはとどまらないのではないかと疑っています)、それが本当なら、何にしても皆さんの手持ちのビットコインの価値が上がることになります。

フォーセットへの寄付のアドレスは15VjRaDX9zpbA8LVnbrCAFzrVzN7ixHNsC *1です。

寄付の額と、スラッシュドット効果がどこまで続くかによります。

ビットニッケルス(bitnickels)*3の配布を始めないといけないかもしれないです。

最近は5 BTCは大金みたいなので、普通に考えれば1 BTCか2 BTCにすべきでしょう。

これは、コイン生成が難しすぎても新たな利用者がコインを獲得できるという、大切なサービスです。

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【訳注】
*1 原文においてこの部分は打ち消し線がついていたが、なぜそうなっていたのかはわからない。このビットコインアドレスには2024年1月18日現在いくらかのビットコインが格納されている。
*2 この行はサトシの発言ではなく、フィル・シャンパーニュ氏の補足。
*3 Nickel はアメリカ合衆国5セント硬貨の俗称。5セントは少額硬貨の単位であるため、これは Gavin が定義した少額のビットコインの単位だと考えられる。1ビットコインは1億分の1まで分割できるため、例えば 0.0000005 ビットコインを 1 bitnickel と定義すれば、1ビットコイン = 600万円と仮定すると 1 bitnickel は約3円となる。3円の配布なら、十分なビットコインを持っていれば長い間 faucet を運営することができる(スクリプトによる連続申請を避けるため、同一IPからの短時間での連続アクセスの制限を設けるべきではあるが。実際に多くの faucet はこれを実装している)。

解説

この文によると、初期に 5000 ものビットコインが faucet 経由で配布されたとあります。今となってはなんとも贅沢な話です。仮に1ビットコインを600万円とすれば、300億円もの価値が配布された計算となります。

これがどのぐらい寄与したかはわかりませんが、ビットコインの価格はこの後も順当に伸びていきます。

小宮自由

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Source: https://www.neweconomy.jp/features/sato/366103