業界団体がトルネード・キャッシュ制裁解除求める訴訟で2度目の意見書提出

制裁決定は違法

米ブロックチェーン協会(Blockchain Association)が、暗号資産(仮想通貨)ミキシングサービスのトルネードキャッシュ(Tornado Cash)への制裁に対し、控訴裁へ2度目の意見書(アミカスブリーフ:amicus brief)を提出したと11月20日発表した。

なおアミカスブリーフとは、被告のために法廷助言者(事件の当事者ではない第三者)が裁判所に提出する意見陳述書のことである。ブロックチェーン協会は今年4月にもトルネードキャッシュの制裁についてアミカスブリーフを提出している。

ブロックチェーン協会は今回のアミカスブリーフにて、OFACのトルネードキャッシュに対する制裁決定は違法であり、法定権限を越えていると指摘。「恣意的かつ気まぐれ」であり、米国憲法に反していると主張した。 ブロックチェーン協会の上級顧問であるマリサ・コペル(Marisa Coppel)氏は「OFACの措置は、その権限を大幅に超え、法を遵守するアメリカ人のプライバシー権を危うくする危険な新たな先例となる。OFACはトルネード・キャッシュが誰でも使うことができるツールであることを理解しなければならない。OFACは、合法的な目的のツール自体を制裁するのではなく、そういったツールを悪用する悪い奴(bad actor)に焦点を当て続けるべきだ」と述べている。

制裁対象となったトルネードキャッシュ

OFACは2022年8月、トルネードキャッシュを、資金洗浄に関与したとして制裁対象に加えた。財務省が技術全体を制裁対象としたことにより、米国内のユーザーはトルネードキャッシュを利用できなくなり、資産が凍結された状態となっている。

この制裁はトルネードキャッシュの開発者や支援者が制裁の対象となるかが明確ではなく、暗号資産コミュニティからOFACに対して反発の声が上がり、コインベース社員2人を含む6人のトルネードキャッシュユーザーが米国財務省を相手とする訴訟を起こしている。

2022年9月には大手暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)が同訴訟への資金提供を表明。コインベースのCEOであるブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)氏は自身のブログにて「犯罪と戦うという財務省のコミットメントには共感しますが、この制裁は罪のない人々を傷つけ、分散型金融(DeFi)とWeb3の将来を脅かすものだと考えています」と述べ、財務省を批判した。

こういった声を受けOFACは2022年11月、トルネードキャッシュに含まれる個人について明確な説明を付け加え、トルネードキャッシュを制裁対象に再指定している。

OFACによると「現時点では、トルネードキャッシュの個々の創設者、開発者、DAOのメンバー、ユーザー、あるいはトルネードキャッシュの支援に関与するその他の人物は含まれません 」とのことだった。

トルネードキャッシュについて

トルネードキャッシュは、複数ユーザーの暗号資産(仮想通貨)の取引をミキシングすることで、その取引履歴を匿名化できるサービスだ。

その特性をサイバー犯罪に関与した資産のロンダリングに利用されていることが問題視されていた。昨年3月には、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」がトルネードキャッシュを利用してサイバー攻撃で得た資産をミキシングし、当局の追跡を困難にしていた。

なおトルネードキャッシュの共同創設者は3名おり、そのうちの1人である共同創設者兼トルネードキャッシュ開発者のアレクセイ・ペルツェフ(Alexey Pertsev)氏は、2022年8月にオランダ警察によって逮捕されている。ペルツェフ氏は逮捕後約90日間の勾留を経て、2022年11月にマネーロンダリングの容疑で起訴された。

同氏は審問のため、オランダに長く勾留されたが、今年4月、帰国が許可され、自宅から裁判を待つことが報じられていた。

残り2名の共同創設者は今年8月、OFACと米司法省(DOJ)より起訴されている。

OFACはトルネードキャッシュ共同創設者のロマン・セメノフ(Roman Semenov)氏を北朝鮮に関連するハッカー集団「ラザルス(Lazarus)」に物質的支援を提供する役割を果たしたとして起訴。

ODJは、セメノフ氏及び同社の2人目の共同創設者であるローマン・ストーム(Roman Storm)氏をマネーロンダリングの共謀、無認可送金業の共謀、制裁違反の共謀で起訴している。

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参考:ブロックチェーン協会
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Source: https://www.neweconomy.jp/posts/354314