一斉に訴えられる
破産した暗号資産(仮想通貨)レンディング企業セルシウスネットワーク(Celsius Network)が、複数の米当局より7月13日一斉に訴えられている。
セルシウスは昨年6月12日、暗号資産の価格が暴落している市場状況を理由に出金・送金・スワップ機能を一時停止した。そこから同社が財政難に陥る危機的な状況なのではと報じられたのち、セルシウスは同年7月に「連邦破産法11条」の適用をニューヨークの破産裁判所に申請した。
今回セルシウスを訴えたのは、米証券取引委員会(SEC)、米司法省(DOJ)、米商品先物取引委員会(CFTC)、連邦取引委員会(FTC)らだ。
SECは、セルシウス及び同社共同創業者で元CEOのアレックス・マシンスキー(Alex Mashinsky)氏を、1933年証券法の登録および詐欺防止規定、1934年証券取引法の詐欺防止規定に違反した罪で起訴した。
訴状によれば、マシンスキー氏は投資家らに対し、「無担保融資やリスクの高い取引は行わない」といった虚偽の誤解を招く発言を行ったとされ、同社の利回り商品の「アーン・インタレスト・プログラム」が未登録証券であったと指摘されている。
またセルシウスおよびマシンスキー氏は少なくとも2020年より、同社の暗号資産証券「CEL」の買い戻しを通じて「CEL」の価格を人為的に吊り上げ、買い支える詐欺行為を行っていたという。
SECはまた、マシンスキー氏に対し、暗号資産証券の購入・提供・販売への参加、または他者による暗号資産証券の購入または販売誘導、または誘導誘導目的の活動に従事することを禁止する差し止め命令を求めている。
併せてマシンスキー氏が公開会社の役員または取締役になることも禁止し、民事罰、利益の没収なども求めている。
なおマシンスキー氏はSECに協力しており、これに応じているとのことだ。
DOJの提訴
DOJはマシンスキー氏を、セルシウスの顧客を欺いたとして、証券詐欺、商品詐欺、および電信詐欺の罪で起訴している。併せてDOJはセルシウスの元最高収益責任者であるロニ・コーエン・パボン(RONI COHEN-PAVON)氏を、人為的に吊り上げた価格で「CEL」を販売したとして、共謀、証券詐欺、市場操作、および電信詐欺の罪で起訴している。
なおマシンスキー氏は13日に逮捕・起訴され、ニューヨーク州地裁に出頭した。無罪を主張しているという。
ブルームバーグによれば、マシンスキー氏は、妻ともう一人の連帯保証人による4,000万ドル(約55億円)の保釈保証金に同意し、保釈される予定だという。同氏は2冊のパスポートを没収され、渡航範囲はニューヨークのみに制限されるとのこと。
起訴状によれば、マシンスキー氏らは「CEL」の価格を吊り上げるために顧客資産を使用したとみられる。また「CEL」の価格を吊り上げて自身の保有する「CEL」を売却することで多額の利益を得ていたという。この行為によりマシンスキー氏は個人的に約4,200万ドル(約58億円)の収益を手にしたとのことだ。
これらの罪が認められば最大で20年の懲役刑に課される可能性があるという。
CFTCの提訴
CFTCはセルシウス及びマシンスキー氏に対し、詐欺罪でニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に訴状を提出している。
具体的には、高い利益と安全性を偽って顧客にデジタル資産商品を同プラットフォームに預けるよう誘導した詐欺と、重大な虚偽表示を行ったとしてセルシウスとマシンスキー氏を告発している。
またセルシウスが未登録の商品プールのオペレーター(CPO)として活動し、マシンスキーがCPOの未登録の関連人物(AP)として活動していたことも告発。未登録で活動していたため、商品取引法に違反していたと指摘した。
CFTCは、セルシウスへ今後の商品取引所法(CEA)違反を禁止する永久差し止め命令を課すことで、同社に対する訴えを解決することで合意したとのことだ。
FTCの提訴
FTCは、マシンスキー氏らが顧客資産40億ドル(約5,500億円)以上を不正に流用していたとして、セルシウス及び元幹部ら3名を提訴した。
セルシウスは和解に応じたが、マシンスキー氏と、セルシオの他の共同創業者であるシュロミ・ダニエル・レオン(Shlomi Daniel Leon)氏とハノク・”ヌーク”・ゴールドスタイン(Hanoch “Nuke” Goldstein)氏は和解に合意しておらず、FTCの3者への提訴はニューヨーク南部地区連邦地裁で進められる予定だ。
セルシウス及び関連会社との和解案では、資産の預け入れ、交換、投資、引き出しに使用される可能性のある製品やサービスの提供、マーケティング、宣伝が永久に禁止されるという。
またFTCは、セルシウスに47億ドル(約6,502.4億円)の賠償金も課したが、この賠償金はセルシウスが破産手続きの中で残りの資産を顧客に返還できるよう、猶予が与えられるとのことだ。
マシンスキー氏らは顧客に対し、「いつでも預金を引き出すことができること、預金に対して7億5000万ドル(約1,037.6億円)の保険契約を維持していること、顧客の債務を履行するのに十分な準備金があること、アーンプログラムの参加者は暗号資産預金に対して18%の年利回り(APY)という高い報酬を得ることができる」といった虚偽の報告を行い、悪化した財務状況を隠し続けたという。またセルシウスは「無担保融資を一切行っていない」と繰り返し主張していたという。
なおマシンスキー氏、レオン氏、ゴールドスタイン氏は、セルシウスが破産を申請する2カ月前に、多額の暗号資産をセルシウスから引き出し、自身の資産を守ったとのことだ。
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参考:SEC、DOJ1、DOJ2、CFTC、FTC
デザイン:一本寿和
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Source: https://www.neweconomy.jp/posts/325746