ビットコインのプライバシー、どこまでが匿名か?
ビットコインを発明し、未だその正体が分かっていないサトシ・ナカモト。そんなサトシが残した約2年間の文章を、小宮自由氏の解説と共に紹介する連載「サトシ・ナカモトが残した言葉〜ビットコインの歴史をたどる旅」の第26回。
まずサトシのメールの前に、本連載の元になっている書籍『ビットコイン バイブル:サトシナカモトとは何者か?』の著者フィル・シャンパーニュ氏の解説も掲載する。
フィル・シャンパーニュ氏の解説
百ドル札が詰まったスーツケースは痕跡を残さずに移動できるが、それとは違ってビットコインの取引は公開の元帳に記録される。ビットコインアドレスはその性質上匿名だが、ビットコインアドレスの名で実行された取引は匿名ではない。
ビットコインはどれくらい匿名か? サトシ・ナカモト 2009年11月25日 午後06時17分23秒
それではサトシの投稿を見ていこう。
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(注:斜体部分は、サトシ以外の者の質問を指す)
ネットワーク上のノードは、コイン送金人と受取人のビットコインアドレスを特定できますか? ブロックには、ビットコインの送金元と送金先の履歴が含まれていますか?
ビットコインはビットコインアドレスからビットコインアドレスへ送られますが、これはランダムの数字で、身元特定情報は含まれません。
IPアドレスに送っても、送金はビットコインアドレスへ届きます。IPアドレスを使うのは、新規のビットコインアドレスを要求して受取人のコンピューターに接続し、受取人に直接送金して確認をとるときだけです。
ブロックには、コインが送金された送金先のビットコインアドレスの履歴が保存されています。ビットコインアドレスの利用者の身元情報が知られず、アドレスを一度のみの使い切りにすれば、ブロックの情報から分かるのは、ある匿名の人物がある金額をある別人に送ったという事実だけです。
匿名やニックネームを使ってプライバシーを隠したいなら、自分が使っているビットコインアドレスに紐付けて身元特定情報を明かさないことです。ビットコインアドレスをウェブに投稿すれば、自分の投稿ネームがそのアドレスに紐付けされ、このアドレスに関わる全ての取引に紐付けされます。ハンドルネームで投稿すれば、自分の身元そのものには紐付けせずにニックネーム状態をキープできます。
プライバシーを高めるためには、ビットコインアドレスは一度のみ使い切りにするのが最善策です。「オプション(Option)」から「アドレスの変更(Change Your Address)」を使えば、好きな回数だけアドレスの変更ができます。IPアドレスで送金しようとすると、毎回、自動的に新しいビットコインアドレスが作られます。
ノードではどのビットコインアドレスがどのIPアドレスに属しているかは分かりますか?
分かりません。
ビットコインを初めて稼動するときに、SOCKSプロキシを有効にするコマンドラインのオプションはありますか?
次のバージョン0.2のリリースでは、初回にプロキシを通して稼動するコマンドラインはbitcoin -proxy=127.0.0.1:9050となっています。
Torの問題点は、ビットコインで最初に他のノードを探すときに使われるIRC(インターネット・リレー・チャット)サーバーが、Torの出口ノードを排除している点で、これはどのIRCサーバーでもとっている対策です。前に接続済みならば、すでにシードされていますが、初回のときはノードのアドレスをbitcoin -proxy=127.0.0.1:9050 -addnode=<someipaddress>のようにする必要があります。
静的IPアドレスでノードを稼動する人が着信接続を受け入れ、-addnodeに利用できるよう、IPを投稿できれば、素晴らしいです。
ネットワークアドレス変換(NAT)で多数のクライアントとつながったIPアドレスにビットコインを送るとどうなりますか?
自分のNATでポート8333のフォワード先に設定したその相手方に受領されます。ルーターがフォワード時にポート番号を変える設定になっていれば、一つ以上のクライアントによる受領を許可することになります。例えば、ポート8334がコンピューターのポート8333にフォワードされれば、送り手はx.x.x.x:8334に送れます。
NATがポート番号を変換できなければ、ビットコインが束縛する着信ポートを変更するコマンドライン・オプションは、現在は実装されていませんが、この点は調べてみます。
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解説
サトシナカモトのビットコインアドレスは知られていますが、サトシナカモトが誰であるかは一般には知られていません(自分がサトシであると主張する人は何人かいますが、いずれもアドレスの所有権を証明できておらず、虚偽の主張である可能性が高いです)。
ビットコイン上の取引は全て公開されるので、取引内容は隠せませんが、取引した人の個人情報は(自ら公開しない限り)隠せます。プライバシーを重視する人は、アドレスも毎回変更し、取引のパターンも隠蔽するのが通常です。これはイーサリアム等他のブロックチェーンでも取られている手法です。
ビットコイン(や他の匿名化技術)を使っていたけれども特定されてしまった例として、Ross Ulbricht があげられます。彼はダークウェブであるシルクロードを運営しており、最終的にFBIに特定されて逮捕されました。ビットコインアドレス自体で特定されたわけではなく、運営しているサイトに捜査官が何らかの方法で管理者権限を得て内部情報を洗い出して特定されたようです。
ほとんどの場合、決済には何かしらの目的があり(例:商品の購入)、その目的を果たす場所が匿名ではない場合、ビットコインが匿名であろうと個人は特定されうるということです。
小宮自由
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Source: https://www.neweconomy.jp/features/sato/338567