法廷で決着はつかず
暗号資産(仮想通貨)業界が注目する裁判で、米ニューヨーク・マンハッタンの連邦判事は1月17日、米大手暗号資産取引所コインベース(Coinbase)と米証券取引委員会(SEC)に対し、デジタル資産が証券にあたるか等についての見解の相違を厳しく追及した。
コインベースは、規則に違反していると主張するSECの訴えを却下するよう裁判所に求めている。
キャサリン・ポーク・ファイラ(Katherine Polk Failla)判事は17日、証券を定義する判例や、SECが投資契約と見なしているコインベースなどで取引されている複数の暗号資産の属性に焦点を当て、双方の主張を聞いた。
4時間を超える審問の後、ファイラ判事は複数の質問について引き続き検討するとし、法廷での決定には至らなかった。
この判事の決定はデジタル資産に対するSECの管轄権を明確にするものであり、デジタル資産に影響を与える可能性が高い。
この訴訟は、SECが暗号資産業界に対して起こしている多くの訴訟の1つだ。SECは当初、デジタル資産を販売する企業に焦点を当てていたが、ゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長の指揮の下、暗号資産取引プラットフォームや清算業務を提供し、ブローカー・ディーラーとして活動する企業をターゲットにしている。
SECは昨年6月にコインベースを提訴し、コインベースはソラナ(Solana)、カルダノ(Cardano)、ポリゴン(Polygon)を含む少なくとも13の暗号資産の取引を仲介しており、これらは証券として登録されるべきだった主張している。
1933年証券法は「証券」という用語の定義を概説しているが、多くの専門家は投資商品が証券にあたるかどうかを判断する際、連邦最高裁判所の判例に依拠している。重要な判断基準は、人々が利益を期待して一般企業に投資することを契約しているかどうかである。
世界最大の上場暗号資産取引所であるコインベースは、暗号資産は株式や債券とは異なり、投資契約の定義に当てはまらないと主張している。
SECの弁護士は、証券は野球カードやビーニーベイビーズのようなコレクター商品の購入とは異なると主張し、1990年代にアメリカ人が価値の上昇を期待してこれらのぬいぐるみを購入した傾向に言及した。
SECのパトリック・コステロ(Patrick Costello)主任訴訟弁護士補佐は、本件の核となる暗号資産はより大きな「企業」を支えるものであり、投資契約に似ていると主張した。
「ネットワークやエコシステムの価値が上がれば、(関連する)トークンの価値も上がる」と同氏は述べている。
しかしファイラ判事は、SECが「証券を構成するものの定義を広げる」よう求めていることに「懸念を抱いている」とSECの弁護士に語った。
SECは、コインベースのプラットフォームのような流通市場であっても、デジタル資産の購入者は株式や債券のような投資として暗号資産を購入していると主張。
しかしコインベースの弁護士はこれに同意せず、そのような暗号資産の購入者は、一般企業の収益を得る権利を享受する契約に署名していないと指摘した。
判事は、この訴訟がいわゆる「メジャー・クエスチョン・ドクトリン(major questions doctrine)」に関係しているというコインベースの主張を退けたようだ。「メジャー・クエスチョン・ドクトリン」とは国家的に重大な意味を持つ問題について連邦政府機関が決定権を行使する場合、議会の承認がなければならないとする、米国の行政法における法解釈の原則だ。
SECはまた、コインベースのステーキングプログラム(ブロックチェーンネットワーク上での活動を検証するために資産をプールし、顧客への報酬と引き換えに手数料を取るプログラム)も訴訟の対象とした。SECは、このプログラムは同機関に登録されるべきだったと主張している。
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Coinbase, SEC lock horns in US court over crypto securities
Reporting by Hannah Lang in Washington and Chris Prentice and Jody Godoy in New York; Editing by Michelle Price, David Gregorio and Matthew Lewis
翻訳:髙橋知里
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
images:Reuters
Source: https://www.neweconomy.jp/posts/364830